適塾 / 適々斎塾 … 福沢諭吉らを生んだ緒方洪庵の蘭学私塾

2022年9月6日

適塾 緒方洪庵

「適塾(適々斎塾)」は、医師であり蘭学者でもある 緒方洪庵が開いた「蘭学の私塾」です。そこで、福沢諭吉 や 大村益次郎ら多くの門下生が学び、幕末から明治維新にかけて活躍しました。そのルーツは、現在の「国立大学法人 大阪大学」の医学部につながっています。

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「適塾」とは

正式名称は、緒方洪庵の「適々斎(てきてきさい)」という号を由来とする「適々斎塾」です。なお、一般には「適塾」として知られており、「適々塾」と呼ばれることもあります。

大阪大学 HP 適塾

「適塾」の成り立ちと歴史

緒方洪庵によって開かれた適塾は、幕末から明治維新にかけて多数の偉人を排出し、発展する中で現在の「大阪大学」につながっています。

成り立ち

現在の岡山市に生まれた緒方洪庵は、元服すると大坂で中天游(なかてんゆう)に蘭学と蘭医を学びます。その後、江戸や長崎でも蘭医を学んだあと、1838年に現在の大阪市中央区瓦町に医業を開業すると同時に「適塾(適々斎塾)」を開いたのが始まりです。

そして、門下生がどんどん増えていくと手狭になり、1845年に現在の大阪市中央区北浜三丁目に移りました。なお、適塾が開かれていた25年間に「およそ3000人以上」もの入門生がいたと伝えられています。

歴史

多くの門下生が学んだ適塾は、1863年に緒方洪庵が亡くなったあとも引き継がれますが、1868年(明治元年)に閉塾することとなりました。そして、翌1869年には、当時大阪府知事であった後藤象二郎らの尽力により、大阪市天王寺区上本町に「仮病院および仮医学校」が開かれます。

その後、改組や改称を幾度か経ながら「大阪帝国大学」へと発展し、現在の「国立大学法人大阪大学医学部」となっています。また、1964年には建物が国の「重要文化財」の指定を受けました。

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「適塾」の教育

塾生ちは、医学書にとどまらず 蔵書を解読することによって オランダ語とともに最新の知識や技術を身につけていきました。

適塾には、当時は貴重なものであった写本の蘭和辞典「ズーフ辞書」があったため、塾生は昼夜にかかわらず「ズーフ辞書」を奪い合うように使って勉学に励んでいました。また、月に数回「会読」と呼ばれる翻訳の時間があり、その出来栄えによって採点や評価がなされて 好成績の者は上級へすすんでいきます。

しかし、自由闊達な雰囲気にありながら、洪庵は学習態度や生活態度が目に余るようだと厳しい処置を下すこともあったようです。

緒方洪庵

適塾を開いた緒方洪庵は、1810年に 現在の岡山市に武士の子として生まれました。1825年に元服すると大阪に出て、翌年には中天游の「思々斎塾」に入門して蘭学や医学を学びます。そののち江戸に出ると蘭医である坪井信道や宇田川玄真に、長崎ではオランダ人医師からも医学を学びました。

1838年、大坂に戻った洪庵は医業の開業と同時に適塾を開きます。適塾が賑わう一方で、1849年に「種痘所(現在の除痘館)」を設立、牛痘種痘法による「天然痘の予防」に力を尽くしました。その後、幕府の西洋医学頭取となるなど、その実力と功績は周知のものとなります。

そして、名実ともに「西洋医学」のトップとなった洪庵ですが、当時対立関係にあった「漢方」についての知識も持っており、常に患者の状況に合わせた治療を考えていました。このことから、洪庵の柔軟な考え方や患者に寄り添う意識をうかがい知ることができます。

1863年に54年間の人生を終えた洪庵ですが、性格は温厚であったそうです。また、西洋医学に欠かせないオランダ語が堪能であったことのほか、古典にも造詣が深く 和歌が得意だったと言われています。

門下生

緒方洪庵の功績は、医学にとどまらず多数の人材育成もにありました。なお、主な門下生は次のとおりです。

・大鳥圭介  … 医学に加え軍学や工学を学び、幕末には軍人、維新後は官僚として活躍。
・大村益次郎 … 医師として活躍したのち兵学を修め、日本に「近代的軍制」を築いた。
・久坂玄機  … 長州藩士であり久坂玄瑞の兄、医師として活躍し適塾塾頭も務めた。
・手塚良仙  … 医師、蘭学者。手塚治虫の曾祖父であり『陽だまりの樹』の主人公。
・橋本左内  … 元藩医。藩政改革や一橋慶喜擁立に尽力するも「安政の大獄」で刑死。
・福沢諭吉  … 思想家、教育者。「慶應義塾大学」を創設。著書に『学問のすすめ』。

緒方洪庵と適塾 / 大阪大学出版会

今に残る「 適塾 」

緒方洪庵の旧宅であり適塾の地は、今も大阪市中央区瓦町三丁目に残ります。大阪の金融の中心であり ビジネス街となっている 淀屋橋と北浜の間に佇んでいます。

緒方洪庵旧宅 および 塾

見取り図

適塾は間口は狭いものの、奥行きが長くなっているため 道路からの外観よりも実際は広くなっています。なお、1階の入り口からすぐの「教室」とその真上の2階の「大部屋」が主な学習の場でした。

適塾 見取り図
「 適塾 見取り図 」

入り口

まず、入り口を入ると、すぐ右手に「受付」があります。なお、当時の「受付」付近は「教室」でした。

適塾 入り口
「 入り口 」

中庭

左手の廊下伝いに中庭の奥へすすみます。さらに、この奥には「書斎」や「応接室」などがあります。

適塾 中庭
「 中庭 」

2階

こちらは2階の「大部屋」から「中庭」の方向を撮ったものです。そして、この写真の右手あたりに「ズーフ部屋」がありました。

緒方洪庵像

適塾の西側に小さい公園に「緒方洪庵像」が鎮座します。そして、その目は何を見据えているのでしょうか。

緒方洪庵像
「 緒方洪庵像 」

花神(上)/司馬遼太郎(新潮文庫)

案内

入館について

開館時間

10:00-16:00(休館日は、月曜、祝日の翌日、12/28-1/4)

参観料

一般 270円、 高校生/大学生 140円、 中学生以下 無料

アクセス

大阪市中央区北浜3丁目3番8号

公共交通機関で

京阪本線 / 淀屋橋駅または北浜駅から 徒歩5分
京阪中之島線 / なにわ橋駅から 徒歩5分
大阪メトロ御堂筋線 / 淀屋橋駅から 徒歩5分

地図

福沢諭吉「学問のすすめ」ビギナーズ 日本の思想(角川ソフィア文庫)

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